ナナルイのこれまで。これから

8月6日から9月25日まで、名古屋のギャラリーYEBISU ART LABOで鈴木薫個展「0人称」を開催しています。9月初旬には、ナナルイ発行の『八木喜平歌集タテイトヨコイト』が発売されます。

鈴木薫個展「0人称」より
歌集の表紙

2021年12月29日に出版社を立ち上げると決断してから8ヶ月。その時点では、法人化は2023年の春にして、まずは自費出版で一冊の本を制作してみようと考えていました。祖父の歌集を編集し、組版、装丁、印刷の手配をすべて自分たちで手掛け、身内や友人に配る予定でした。

3月になって、現代美術アーティスト弓指寛治さんの個展「マジックマンチュリア」のパンフレットとして活用できるようなポスター新聞を制作しました。個展の会場で弓指さんとギャラリーの方がたくさん売ってくださったことで、ナナルイの進む道が少し見えてきました。

ナナルイ発行ポスター新聞

4月中旬、薫宛にYEBISU ART LABOの原さんから連絡がありました。8月9月の約2ヶ月間、個展を開催してみませんか?とのお誘いでした。二人で数日考えて、夏に歌集が出来上がるのに合わせて、短歌をテーマに作品をつくり、個展の会場で出版する本を売りたいと返事をしたら、それでいいと原さん。この日から怒涛の日が始まったのです。

まずはすぐにでもナナルイを法人化しようと思い直しました。自費出版で本を出す予定で進めていた歌集も、ナナルイから発行し、取次会社とも契約して流通させてみようと決めました。装丁、挿画、校正の依頼、さらにイベント会場で販売する本に関わるグッズの商品開発。鈴木薫は自身の作品の制作もあります。とにかく名古屋で行う個展に合わせて、全部やってみました。

ナナルイオリジナルのしおり

法人化をする前に、ある取次会社の方にメールをしてお話しを聞かせていただいたことがありました。喫茶店で資料を見せていただきながら具体的な仕事の流れを教えてくださり、ナナルイとして、歌集、写真集などの本を出版していきたいと話すと、淡々と答えてくださいました。

「歌集はほとんど返品されると思いますよ。あと、写真集は売れませんねえ。たとえ木村伊兵衛賞をとったとしてもそんなに売れないでしょう」

わたしはこの時点で頭が真っ白になり、法人化は辞めようかな、と思いました。そんな中でもサラッとこんなことも話してくださったのです。

「イベントとかやったらその場では結構売れるもんですよ」

正直な人の言葉はこちらの心に即、響きます。ナナルイの進む道がこうして決まっていきました。ホームページを開設して皆さんの訪問を待っているだけではだめなんだということがわかったので、ナナルイがみなさんが住む街に出かけて行って、イベントをやっていきます。

ナナルイのテーマは生活と芸術。生活の中の芸術とはどんなものか考えてみました。日常生活の中で読書をする時間とは、どんな空間に居ても、瞬間に孤独になれることだとおもいます。本だけと向き合う自分。本と対峙することで新しいものに触れる瞬間がある。

芸術に触れる瞬間もこれに似ていると思っています。祖父八木喜平は機織りをしながら生活し、18歳で短歌に出会いました。日常生活の中で、ある瞬間に短歌ができたとき、その時々に祖父は芸術に触れていたのだと思います。祖父がそれを芸術と意識することなく触れていたものを、わたしもまたナナルイで本を作っていく過程で体験してみたいと思っています。

短歌と現代美術。会場で販売する歌集と作品を繋げるワードが「0人称」。短歌を詠む人と読む人、それぞれの「わたし」が会場で点滅し、自由にギャラリー内を彷徨います。

鈴木薫「0人称」より

8月5日の深夜、ギャラリーでの設営を終えて作品が完成した瞬間に、明滅する光が見えました。今後ナナルイを続けて行く中で、励みになるような光でした。

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