小川和『日常的な延命 「死にたい」から考える』

表紙のタイトル文字は、著者である小川和(おがわなぎ)さんの手書きです。装丁を手掛けたデザイナーの吉野さんから、「この本は小川さんが読者に向けて書いた手紙のようだと感じたので、手書きでタイトル文字を仕上げてもいいかも」と提案があり、即、採用しました。
小川さんからの手紙だと思いながら、印刷所から届いたばかりの『日常的な延命「死にたい」から考える』を改めて読み始めました。「死にたい」について考え続ける本なので、「死にたい」ということばが何度もでてきます。小川さん自身が「死にたい」についての思考を重ね、日常的な延命を実践してきたその切実さが伝わってきます。
この本の特徴は、章を終えるところで、まだ「死にたい」って思ってしまいますよね、という小川さんの声が聞こえてくることです。じゃあ、次の章ではこういう話しをしますと語り、新たなキーワードがでてきます。そんなふうに続くなかで、最後の最後にカフカについて考えることになります。このカフカの章だけでも読んで欲しいです。「死にたい」と思いながら生きていくことの世界に、あらたな見方を示してくれます。

どんな雰囲気の本にしようかと考えていたときに、小川さんから提案がありました。ずっと家にいて、ようやく本屋さんには入ることができた方にとって、ふと手にとってもらえるような本にしたい、と。
SNS戦略よりも、とにかく本屋さんでどうやってこの本に出会ってもらうかを、しきりに気にかけていらした。
表紙、帯、目次、まえがき、口絵の写真の質感。細部まで小川さんの思考が行き届いた本です。ぜひお手にとって、ページをめくってみてくださいませ。